技術情報・技術コラム

単方向型アナログ無線機をリバースエンジニアリングし、さらに機能付加して対応した事例

基板リバースエンジニアリング

マイコン

■はじめに
産業機器向けカスタム製品を多く開発してきた山勝電子工業では、お付き合いしている業界自体が機器を数十年単位で使用されることもあり、これまで様々な基板リバースエンジニアリングを手掛けてきました。リバースエンジニアリングとなった背景は、古すぎて設計資料がない…基板が壊れてどうしようもない・・・といったことが多くあるのですが、今回は当社が手掛けた、ちょっと変わった事例をお伝えいたします。

■単方向型アナログ無線機のリバースエンジニアリングのご依頼
お客様より、単方向型アナログ無線機を海外企業に依頼し開発したが、その企業が倒産してしまったので、当社にて基板リバースエンジニアリングができないか、とご相談を受けました。実はこのアナログ無線機、開発したものの無線通信がうまく動作しないという問題を抱えたままになっていました。さらにその海外企業が倒産してしまい、設計資料も入手できない状況でした。

そこで当社では、まずはじめに基板の解析からスタートしました。すると、採用しているアナログ無線通信チップ自体に動作不良があることが分かりました。さらに解析を進めると、チップに不具合がある訳ではなく、GNDの処理が悪く実装を見直す必要があることが判明したので、当社は基板アートワークから修正し、実装会社とも条件を詰め、はんだ乗りを改善することでこの問題を解決しました。

またこの単方向型アナログ無線機のリバースエンジニアリングには、無線通信チップ以外にも課題がありました。採用されていたマイコンが非常に古かった為、システム再構築のために多くの時間を解析に費やしました。この課題に対しては、システムの全体把握を行った上で、最新のマイコンチップへ移行することで、今後も継続的に生産できるよう対策を行いました。

加えて、本案件は単なる基板リバースエンジニアリングに留まらず、追加仕様も盛り込んで開発を行ったことも特徴です。下記に付加した機能を記載します。

①当初は液晶表示であったが、操作性向上および簡易化のため、LEDでの状態把握を行うよう変更
②該当の電波帯域を受信しやすいよう、アンテナを設計変更
③稼働時間を長くするため、新バッテリーを提案し2倍の容量へ向上

■最後に
今回ご紹介した単方向型アナログ無線機のリバースエンジニアリングは、当初お声がけ頂いた際には、本体とカタログを渡されてたのみで解析をスタートさせています。こうした限られた情報量からスタートしたにも関わらず、単なる再製作だけではなく機能付加して再開発を行ったという点においては、非常に難易度の高い案件といえると考えています。
山勝電子工業ではこうした基板リバースエンジニアリングも対応が可能なので、お困りの際はぜひお声がけ頂けますと幸いです

P.S.解析には多くの時間を要します。お手持ちの情報があればあるほど時間もコストも低減できますので、ご協力頂けますと大変有難く存じます。

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